若き頃、故郷を離れて戦場を駆けめぐり、
異郷の地(台湾)で余生を過ごす老兵の物語。

1949年、中国大陸での内戦に敗れた蒋介石と国民党軍、政府要人、その家族たち約200万人が人口600万の台湾に渡ってきた。彼らは台湾の政官界を掌中にし、それ以前から住んでいた人々(本省人)の上に君臨した。彼らは外省人といわれた。200万人のうち60万人が国民党一般兵士だった。そして、中国大陸で勝利した共産党は「台湾の解放」を、台湾の国民党は、「大陸への反攻」を掲げた。台湾全土に戒厳令がしかれ、自由がなくなった。
その一方、台湾は経済発展を遂げ、蒋介石〜蒋経国の時代を経て、李登輝の時代を迎える頃、民主化が進み、戒厳令もなくなり、国民党以外の政党も合法化された。他方、中国は、文化大革命の嵐を経て、一党独裁を維持しつつ経済の改革開放に踏み出し、成長が著しい。

60年の歳月が流れる中で、台湾に渡った国民党兵士は全て退役した。 彼らは、「栄誉国民」=栄民と名付けられた。国家は栄民に数々の特典を与えた。 外省人たちは、出身部隊ごとに集落を形成した。それは眷村と言われ、大陸出身地の言語を使用、一般の台湾社会と一線を画していた。眷村に住む栄民には家族(妻や子や孫)がいた。しかし1人で過ごす元兵士もいる。彼らは「栄民の家」といわれる軍の施設で2人一部屋の集団生活をしている。食堂や映画館やカラオケや麻雀などの娯楽場、売店、病院も完備された元兵士たちだけの棲み家。台湾でもタブーとされていた「栄民の家」にカメラが入り、老兵たちの心のうちに迫っていく。

彼らにとって、国とは? 故郷とは?
家族とは? 自らの人生とは? 
彼らは語る。
日本軍との戦い、共産党軍との戦い。
台湾に来た時のこと、自分が兵士になった時のこと…。
志願した者もいれば、強制された者も。
そして大陸の中国、いまを生きる台湾。
クリエイティブ21
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